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本当の意味でオーナー営業につながる賃貸管理DXとは~管理業務が変わる10のストーリー~

元アミックスの賃貸管理部門責任者で、管理業務改革とデジタル 化を推進、2022年7月に、賃貸不動産管理業のあり方をPMの観点から研究し実践するという目的を掲げ、 株式会社PMラボを設立された深澤成嘉さんと、当社代表近藤が「管理業務を変える」をテーマにこれからの賃貸管理に重要ないくつかのトピックについてお話しするシリーズ第三弾! 今回のテーマは「オーナー営業」です。 

※深澤さんと近藤のプロフィール詳細はこちらからご覧ください。

オーナー営業とは

深澤

今回はオーナー営業がテーマということですね。そもそもよくあるのが、「(とりあえず)アパートを建てましょう、リノベーションしましょう」って提案しますよね。(笑)

でも、なんでもかんでも提案をすることがオーナー営業なのか?といういう疑問があります。

近藤

そもそもオーナーって何かって考えると、オーナーは、「物件の所有者で物件を所有する目的がある」わけです。

例えば地主だったら、節税対策や相続対策が目的で、現金とは別の資産に変えるために物件を所有しています。投資家は利回りだったり、地主でもなく投資家でもなく二代目で目的なく引き継いでしまったけど、これからどうしようと悩んでいるオーナーもいるかもしれない。

このオーナーのペルソナがしっかり見えていて、それぞれの目的に合った提案をすることがオーナー営業だと思います。

預かり資産をしっかり守って運用して資産化する

近藤:

預かり資産をしっかりと守ってサポートしていくのがPMの役割。その観点からオーナー営業を考えると、先ほど触れたとおり、オーナーのセグメントは

・元々の地主層

・投資家

・二代目地主など

の3つに大きく分かれます。

また、それぞれの属性によって当然、賃貸経営の目的も変わってきます。相続対策ニーズだったり、資産運用・組み換えニーズだったり、追加投資ニーズをお持ちの方もいる。

そこのニーズをしっかりととらえた上で、預かり資産の運用を提案していくのがオーナー営業だと考えています。

オーナーのペルソナごとに、接点チャネルの構築の方法、どんな提案を、どういうツールを使って行っていくのか、これらをしっかりと考えていく必要があるのかなと思います。これが結果的にオーナーCRM*や、さらに発展していくと、オーナー向けのウェルスマネージメント*につながると思うのですが、ここに至る道のりは意外と遠くて・・・。

まずはオーナーの情報をしっかりとって、管理することができているのか、というところからになります。

現状として、管理会社さんのオーナー情報はどう集めてどのように管理されているんでしょうか?

※CRMとは、Customer Relationship Management(カスタマーリレーションシップ マネジメント)の略で、日本語では「顧客関係管理」または「顧客関係性マネジメント」などと訳される。

※ウェルスマネジメント(Wealth Management)とは、個人が保有する資産を適切に総合管理するサービスの総称。

属人化していたオーナー情報

深澤:

管理会社は、まだまだアナログな会社が多くて、個人個人のスキルが重視されているが故に、オーナー情報も個人に紐づいてしまっているんですよね。そういった社員が独立するとオーナーごと持っていってしまうなんていうのもよくある話です。

担当者個人がオーナーの情報を感覚的に持っていることで、会社として共有できていないところがまだまだ多いんです。

また、ある程度の規模の管理会社だと、その担当者が部門ごとにいて、用事がある度にそれぞれがオーナーにアプローチしています。

「色んな人が色んな用事で来るけど、三日前に話したことが別の人に引き継がれていない」なんていうのはよくあることですが、オーナーからすると、情報が引き継がれてないとイライラしますよね。もっとお客様目線に立って、誰がアクセスしても「このオーナーの趣味嗜好、物件を所有している目的は何か、現在の物件の状況はどうなっているか・・・」などの情報がすぐわかる状況にしておく必要があるんですよ。

近藤 

属人的だったオーナー情報をいかにCRM でシステム化するかが大事ですね。

接点を明確にして、不用品回収、管球交換確定申告、などなどオーナーごとにある様々なニーズをどこかに統合していかないといけないんです。

単に窓口が一本化することにとどまらず、それぞれのターゲットペルソナごとに最適な解(解決策)を提供していく、その体制構築と仕組み化が必要で、それこそがオーナー営業のDXだと思うんです。

深澤

これまでのやりとりや関係性を担当者個人に帰属させるのではなく、CRMで管理して社内で共有できるようになるといいですよね。

部門ごとに担当者がオーナーへのアプローチや提案をするような体制であったとしても、各担当部門がCRMで対応履歴を共有できれば、コミュニケーションコストはもとより、オーナーのストレスもなくなります。

近藤:

こういったオーナーのCRMと同時にキャッシュフロー分析、最適なレポーティング*がそれぞれのオーナーごとにダッシュボード*化できれば、新しいPMの世界が開けてくると思います。

※レポーティングとは、企業が最適な意思決定をするために必要な情報を提供したり、事業内容や財務状況を公開・報告したりすること

※ダッシュボードとは、複数のグラフや表などでさまざまなデータを一覧で確認できる掲示板のようなもの。分析用のツールなどに搭載されている機能で、ツールに蓄積された多様なデータをまとめて確認するためにある。

データとダッシュボードの重要性

深澤:

オーナー営業に際して、いざ、提案書を作ろうとなったら、色んな場所に格納しているデータを寄せ集めて加工してと、それだけでかなりの時間が取られます。結局データ入力を徹底していても、一発で欲しい提案書が出せないとデータ管理している意味がないですよね。

もっというと、報告書を作成することに時間がかかるということは、提出したデータがその時点ですでに過去データなわけです。ダッシュボードで管理できるということは、常に日々の情報がある程度リアルタイムで可視化できている状態なわけで、問題に対処するスピードが上がり、より早く解決することに繋がります。

そういった価値に加えてオーナーへの提案書や報告書はもとより、社内会議の資料作りといった業務から社員が解放されれば、物件やオーナーに向き合う時間ももっと増えると思います。

近藤:

データを出すにあたってダッシュボードにオーナーごと、建物ごとに必要な経営改善施策が常に出てくる状態にする必要があるんですよ。

つまり、「どう収入増にするのか」「支出を減らすのか」「経営力を最適化するか」「売却タイミング・出口戦略」といった預かり資産の運用最適化案をわかりやすくダッシュボードに表示するんです。これが、これからのオーナー営業の目指すべき世界観です。

深澤:

2022年、賃貸住宅管理業法が施行され、資産を守っていくための業務が法律で明確に規定されました。

今まで手探りで感覚的にやってきたのが、ようやく定型業務をちゃんと管理して、レポーティングするのが当たり前の世界になってきたんです。

それと合わせて、今はアウトソーシングできるサービスも出尽くしてるんですよ。定期清掃や修繕系のビルメンテナンスに関することはもとより、電話対応はコールセンターで24時間対応が当たり前となり、設備クレームだけではなく契約に関することや、近隣騒音などのモラルクレームに至るまで、ありとあらゆる業務がアウトソーシングできます。

だからこそ、管理会社に必要なのは、オーナーに対して物件の価値を最大化する為の提案力と、提案内容を裏付けるデータ分析など、近藤さんが仰っているAssetAppsの世界観がこれからの管理業務に必要になってくるんですよ。

近藤:

今までは雑務が多すぎて忙しいと感じていたけど、実はクラウドで雑務は手放すことができる。いよいよ本来のPMとは何かというところに目を向けられるようになった。これからはオーナーのニーズに対してどうマネジメント力を高めていくかというフェーズに入ってきたんですね。

深澤:

それに伴って、分析軸となるデータがないと話になりません。会社としてオーナーのニーズに対する提案を標準化し、誰でもできるようにするには、きちんとしたデータとダッシュボードが必要になってくる。

あとダッシュボードがあれば現場の状況を確認するだけの定例会議がなくなります。

マネージャーが毎朝スマホで自社の成績を見る。そこで全体の稼働率が96%だったら、あとの4%ってなんなの?ってなりますよね。一方で、その4%を上から指摘されるまでもなく、現場主導で物件ごとに分析されたレポートを基にして、対策を講じて随時報告できたら定例会議は必要なくなるんですよ。スマホでダッシュボード化されて、予実管理の予測数値が黄色信号でアラートが来るようになれば、すぐに対策を打つ、そういうのがあったらいいなーとずっと思ってました(笑)。

PMのDXは提携業務をデジタルに置き換えることから

近藤:

なるほど。今うちで取り組んでいるのも、まさにこのダッシュボードをBI(ビジネスインテリジェンス)*の視点で構築する仕組みなんです。キャッシュフロー、運用状況、建物の寿命、様々なデータをもとにアラートが来る、これらがダッシュボードで見れてスマホで見れる仕組みが必要ですよね。

※BI(ビジネスインテリジェンス) とは、ビジネス分析やデータマイニング、データビジュアライゼーション、データツールやインフラストラクチャ、またベストプラクティスなどを組み合わせて、組織がよりデータに基づいた意思決定を行えるように支援すること

※開発中のダッシュボード

深澤:

賃貸管理業務のデジタル化の目的は、経営に関するあらゆる情報をデータ化し一元管理することで、近藤さんがおっしゃるダッシュボード経営を実現することです。また、データ化されているが故に、情報が社内を超えて社外まで簡単に共有することができるようになります。その結果、単に定型業務をアウトソーシングするのではなくBPOとして部門ごと社外に出すことも可能になる。

電話や煩雑な業務が社内から無くなることで社員の働き方が変わり、本来やるべきPMに集中することで個々の社員がスキルアップすることが賃貸管理業界のDXだと思うんです。もちろん管理している物件の価値を最大化するということは管理会社としての収益アップにも繋がります。

その際、物件ごとに収支分析ができるダッシュボードがあれば、オーナー営業を標準化し、個人のスキルに頼ることなく誰でもオーナーに最適な提案ができるようになります。

近藤:

そうですね。その上で、ある程度システムや仕組みでレポーティングされたものを使って、そこからオーナーとどう関係構築して、どうコミュニケーションしていくのか、やはり最後には人が大事になってくる。システムを活用して雑務をなくした上で、人をどう育てるか。資産運用、マネジメントができる組織づくりが最後は重要になってくるのかなと思います。