目次
ダッシュボードの基本的な考え方
近藤:
ダッシュボードというものが、今経営陣に求められていますね。
まずはじめに、賃貸経営ダッシュボードの入口として、ダッシュボードの考え方についてお話しできればと思います。
深澤:
ちなみにダッシュボードの考え方というのはSalesforce(セールスフォース)などのSaaSで一般的に知られていると思うのですが、アメリカのビジネスモデル的なもので言うと、こういうのは一般的なんですか?
近藤:
今代表的なダッシュボードの専用ツールに「Tableau(タブロー)」というものがあります。tableauは、確か10年ほど前にシリコンバレーで創業した会社で経営ダッシュボードを展開しています。
深澤:
TableauはいわゆるWebマーケティングのツールでもありますよね?
近藤:
そうですね。いろんな使い方があるということですね。Tableauのダッシュボードはこういった感じです。
引用元:Tableauダッシュボードギャラリー>経営ダッシュボード
深澤さんからマーケティングという話もあったように、例えば売り上げ営業利益の推移であったり、レベニューの分析であったり、広告費の推移、セッション数なども見れます。
広告であればGoogleアナリティクスで管理できるし、売り上げ営業利益の推移であれば従来の会計基幹システムから管理会計の考え方でこのようなグラフを作れると思います。
しかしながら、Tableauの考え方は、従来の個々の会計のダッシュボード、webマーケティング活動のダッシュボードとは異なっていて、組織内の売り上げ、営業活動、マーケティング活動、人事などの様々なデータを一元的に集めて、集めたデータを解析して、直感的に理解できるグラフに落とし込んでいく仕組みを展開しています。
いろんなコンポーネントを付け加えられるといった特長もありますね。
様々な文書やグラフが統合できるNotion(ノーション)というツールのように、「データを統合できる」「データをもとに分析し可視化していく」ここがダッシュボードの基本的な考え方かなと思います。
なぜダッシュボードが注目されているのか
近藤:
データを可視化したグラフで展開するダッシュボードのメリットは、経営の意思決定スピードが格段にあがることです。
またダッシュボードでは、発生している警告などの問題の把握や、このシナリオで予算を投じるともう少し営業のストレッチができるといった改善施策のシミュレーションができます。
ダッシュボードの進化系としては、いわゆるAIを活用したダッシュボードというものも今広がりつつあるのかなと思います。
AIが経営データを見ながら、
- これはこういう打ち手をとった方が効率的にリード取れますよ
- ある販促策に、シナリオA・シナリオB・シナリオCの3つのシナリオがあった時に、それぞれどういった導入リソース(ヒトモノカネ)が必要で、期待のアウトプットがどうなるのか
などがシミュレーション数値で出てくると。
AIが出したシナリオA・B・Cのシミュレーションをみて、今回打ち手としてはBでいきましょうといった意思決定スピードを早めるような役割をダッシュボードが担っています。
ただ、ベースとしてダッシュボードというのはデータを一元的に管理しているという話なので、経営層だけでなくミドル層であったり、現場であったり、協力会社さんなど、多層にわたるそれぞれにとってのダッシュボードが実は必要ということなんです。
それぞれに適したダッシュボードというものがこれから求められてくるのかなと思います。
ダッシュボードという考え方を賃貸経営・賃貸管理にどう展開するのかが重要
深澤:
一般的にダッシュボードといえば車のダッシュボードを思い浮かべると思います。
運転席から見えない機械として正常に機能しているかを、いろんなセンサーで管理して表示させるイメージですね。タイヤがパンクしていないか、燃料タンクの残量などありとあらゆるところにセンサーが張り巡らされているから、「これだけ燃料があるからあとどれぐらい走る」みたいな予測まで全部できるわけじゃないですか。あのシミュレーションの考え方がまさに経営でいうダッシュボードになって、その経営ダッシュボードの汎用的な概念(TableauとかSalesforceの考え方)をどうやって不動産管理に落とし込み、物件の経営に落とし込むかが大事ですよね。
近藤:
従来の不動産業界で言われているデジタル化というのは、言ってみれば一部分だったんですよね。例えば電子契約というような、点だけがデジタルになっていました。
ダッシュボードで展開するためには、線とか面でデジタルが進んでいかないと成り立たないんです。先ほど、ダッシュボードは組織内の売り上げ、営業活動、マーケティング活動、人事など様々なデータを一元的に集めてそれを可視化するビューだという風にお話ししましたけど、これを賃貸経営・賃貸管理に置き換えた時にどういうダッシュボードの取り組みの方向があるのかがポイントですね。
賃貸経営・賃貸管理×ダッシュボードの可能性
深澤:
業務の進捗管理という部分でいうと、原状回復工事の期間管理みたいなところが、ダッシュボードを使うことで誰がどこでボールを持っていて、どこがボトルネックになっているかというようなタイムマネジメントとしての進捗管理ができる。
一般的にtableauやsalesforceで言われている汎用的なダッシュボードの概念を賃貸管理の現場に持ち込むとした場合、例えば原状回復工事の受発注がメールだったりFAXだったり部署ごと担当者ごとにバラバラで、進捗管理のマネジメントが困難だったものが、受発注を一つのシステムに一元化することで、スマホだけで100、200の工事の進捗(見積もりの承諾をとってる状態で止まっている、◯日で工事が終わってるはずなのに終わってないのはなぜか、工事は終わっているけど完了報告ができてないので最終チェックを誰もしていない状態等、誰にボールがあるのか)を管理することができるようになります。
別の例としては、入居者からの設備に関するクレームの対応状況を進捗管理する場合が挙げられます。入居者からの問合せには、エアコンや給湯器のトラブル、漏水など水回りのトラブルなど色々なカテゴリーごとにクレームの内容があります。
そういったクレームが発生した後の進捗を、対応中なのか完了しているのか、もっと細かく言うと今現場に向かっていて何時に到着するのかなどを、クレームダッシュボードで可視化することで、顧客対応のマネジメントがスムーズになり、対応の不備による二次クレームを防止することで業務効率の向上にも繋がります。さらに、こういった対応データを蓄積していくことで、設備ごとにトラブルが多くなる時期や機器のストックとの兼ね合いなどの管理の他、物件ごとの設備修繕や交換履歴から老朽化した設備の交換時期を予測し、入居者のクレームになる前にオーナーに対して事前交換の提案を行うなど、入居中の設備クレームが起こらない管理を実践することで入居者の顧客満足度を上げることにも繋がります。
過去をみた反省会ではなく、今の現状を踏まえて未来にどういうことが起こるのかを、経営分析なり進捗管理するのがダッシュボードではないですかね?近藤さん。
近藤:
はい、その通りだと思います。
ダッシュボードを賃貸経営に活用していく場合に大事なことがこちらです。
現場のワーカーさん、ワーカーさんを管理する元請け業者さん、コールセンター、管理会社はもちろんのことオーナーさんなど、物件に関わるこういった何層にもわたるプレーヤーたちが全部デジタルで繋がっていくところです。そしてデータが一元化される。だから今何がどう問題なのか、またはどう判断すればいいかというものが素早くわかる。これがダッシュボードということかなと思います。また、ここがダッシュボードの賃貸経営への応用という考え方に繋がってくるんだと感じています。