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クレーム90%減!設立3年で7億円。管理会社が頼る入居前点検サービス誕生秘話

対談:近藤統嗣(アセットコミュニケーションズ代表取締役)× 池田礼子(リアライズ代表取締役)

今回は、入居前点検サービスで賃貸業界の設備クレームを90%削減し、全国600名の女性スタッフを率いる株式会社Realize代表・池田礼子さんに、創業秘話からサービスの舞台裏までじっくりお話を伺いました。


プロフィール

  • 池田 礼子(いけだ・れいこ)
    1972年大阪府生まれ。住宅設備商社ハートリビングサポートでの営業・役員経験を経て、2022年2月22日に株式会社Realizeを設立。女性スタッフ主体の体制で入居前点検サービスを全国に展開し、2025年度売上見込は約10億円。
  • 株式会社Realize
    設立:2022年2月22日
    事業:賃貸物件向け入居前点検・鍵交換・設備データベース構築
    実績:月間施工件数2万件(2025年3月繁忙期)、入居後設備クレーム削減率90~95%
  • 特徴:全国600名超の登録スタッフの8割が女性。80項目の点検と30~40枚の写真をクラウドに保存し、型番DBとAPI連携で管理会社の基幹システムへ自動登録。

1 女子チーム発、リアライズ誕生秘話――“無理”をチャンスに変えた瞬間

近藤:まずはリアライズ設立までの経緯からお聞かせください。
池田:もともとハートリビングサポートで、営業マンが現場調査に時間を取られて本来のクロージングに集中できないのが課題でした。だったら現地作業を女性チームに任せればいい、と仲間内で盛り上がったのが出発点です。2020年10月に中川社長へ相談し、翌11月11日に沖縄で約120人規模の決起大会を開催。そこから4か月後の2022年2月22日に法人登記しました。

近藤:相談から設立までが電光石火ですね。
池田:ほんとに“ノリと勢い”でしたが、ニーズの大きさは想像以上でした。初年度売上7,000~8,000万円、2期目約2億円、3期目7億5,000万円、今期は10億円弱の見込みです。スタッフは全国で600名を超えました。


2 女性が主役の現場づくり――600名チームの働き方改革

近藤:リアライズといえば“女性活躍”が代名詞です。九州の“女子チーム”が源流とか。
池田:はい。前身は九州エリアで鍵交換を担っていたチームですが、女性が現場に出る発想自体が珍しかった。会社を立ち上げるにあたり「子どもがいるから働けない」と諦めてほしくないという想いが強まりました。実際、シングルマザーのスタッフが「生活が劇的に楽になった」と話してくれるのは何より嬉しいですね。

近藤:女性比率8割。どんな仕組みで現場を回しているんですか。
池田:2~4人をチームにし、必ず固定メンバーで回します。子どもの発熱などで誰かが抜けても、チーム内の他メンバーが「鍵だけ受け取っておくよ」と代行するので穴が空かない。働く側も管理会社も安心できるモデルです。


3 「入居前点検」の舞台裏――1時間半で80項目をクリアする職人技

近藤:点検フローを改めて教えてください。
池田:入居が決まると管理会社さんが共有スプレッドシートに物件情報を入力。私たちは現場で約80項目をチェックします。チェック時間は簡易クリーニングやオプションの鍵交換を含めて1部屋平均1時間半。写真は30~40枚撮影し、すべてクラウドへアップ。設備の品番・型番を必ず残すので、設備トラブルの型番確認にも使えます。

近藤:鍵交換ですが通常の鍵交換に加え、デジタルキーの抹消・再登録まで対応すると伺いました。
池田:はい。シリンダー交換に加え、ICカード、指紋、静脈認証などのデジタル錠もその場で初期化→再登録します。対応できない鍵はほぼありません。

近藤:エラーコード管理も徹底しているとか。
池田:給湯器はメーカー横断で約200のエラーコードをDB化。エアコンは通水テストまで行い、初期不良を事前に発見します。入居後クレームは体感で90~95%減です。


4 全設備を“見える化”! 型番データベースが生むDXインパクト

近藤:型番DBを通して、さまざまな管理業務へのDXインパクトが生まれる可能性がありますね。
池田:はい。大手管理会社さんから「担当者の残業が激減した」と喜ばれています。さらに従来はCSVを渡しても手入力が発生していました。今後は大手管理会社の基幹システムとワンクリック同期も想定しています。

近藤:設備情報が管理会社の把握とズレるケースもあるとか。
池田:実測すると5%弱の部屋で「管理システム上の情報と実物が違う」という事例があります。交換履歴の入力漏れが主因ですが、DBがあると即是正できる。クレーム一次対応でも「品番がわからない」事態を防げます。

近藤:退去立ち会いにも効きそうです。
池田:ええ。「入居前からあった傷」ですと証明できるので、オーナー・入居者双方のトラブルを未然に防げます。


5 10倍成長の軌跡――数字で紐解くリアライズの実力

近藤:数字でも御社の勢いは桁違いですね。
池田:創業3年で売上は約10倍、施工件数は繁忙期の25年3月度で月2万件規模。スタッフの8割が女性という体制でも品質指標を落とさず伸ばせたのが誇りです。

KPI実績
月間施工件数(2025年3月繁忙期)20,000件
入居後設備クレーム削減率90~95%
売上推移初年度 約7,500万円 → 3期目 7億5,000万円 → 4期目 見込10億円
スタッフ構成全国約600名、女性比率80%

6 次なる挑戦は“予防管理”――サービス進化と未来シナリオ

近藤:ここまで来ると次の課題は何でしょう。
池田:点検メニューは3年で大幅に増えましたが、管理会社ごとに要望が異なるため、標準化とカスタマイズの両立が課題です。また製造後15年以上の設備は予防的に一括交換する仕組みをハートリビングサポート社と連携して強化します。

近藤:長期ビジョンを改めてお伺いできますか?
池田:ミッションは「子どもがいるから働けない」をなくすこと。リアライズの仕事で生活が変わった女性がもう何十人もいます。将来は利益の一部で子ども食堂を運営し、地域還元したいと考えています。


7 管理会社へのメッセージ――課題解決のパートナーシップ

近藤:最後に管理会社の皆さまへ一言お願いします。
池田:困りごとは何でもご相談ください―それがリアライズの原点です。入居者・オーナー・管理会社、それぞれの“困った”を女性の力で解決し、物件価値と顧客満足を同時に高めるパートナーであり続けます。