
──本日は、LED交換工事の進め方や、オーナー・管理会社様への価値提供のヒントについて、宇山さんのご経験をもとにお話を伺います。よろしくお願いします。
宇山:
よろしくお願いします。
──まずは簡単に自己紹介をお願いします。
宇山:
アセットコミュニケーションズでビルメンテナンス業務を担当している宇山と申します。以前は大手ビルメンテナンス会社で、ビルやマンション、商業施設、学校など幅広い施設の建物管理をしていました。その中で、環境ソリューションの一環として、社内の蛍光灯物件を全てLED化するプロジェクトを推進し、責任者を務めていました。
【プロジェクト経験】
──大手ビルメンテナンス会社時代のLED化プロジェクトについて教えてください。
宇山:
2020年代に水俣条約の影響で大手メーカーが水銀灯の製造を中止し、蛍光灯からLEDへの切り替えが一気に進みました。これを受けて、会社全体でLED化推進プロジェクトが立ち上がり、私はその総責任者を務めました。物件担当者への指示や、業者向け説明会、全社員への勉強会、役員への進捗報告などを担当しました。その結果、LED工事の件数は前年対比で300%の成長を記録しました。
──対象となった建物のスケールについても教えてください。
宇山:
2階建てのアパートのような小型物件から、20階を超える大型オフィスビル、市役所、商業施設、学校、野球場、プールまで、多様な施設で工事を行いました。特に印象的だったのは、アパレルブランドの生地格納倉庫で、1,000万円超の規模で2カ月かけて施工しました。
──その現場で特に工夫された点はありますか?
宇山:
はい、生地の色を正確に再現する必要があったため、Ra値(演色性)にこだわりました。Ra83の高演色性のLED機器を提案し、他社との相見積もりでもそこが評価されて採用されました。また、倉庫内は作業環境が非常に悪く、生地を傷つけないよう慎重に作業を行い、施工には数か月を要しました。
【提案の進め方】
──LED交換工事を提案する際、どんな点を重視されていますか?
宇山:
まず、現地照明の色温度と照明器具の状態を確認します。色温度を確認しないと、工事後に色味が変わってクレームになる可能性があります。また、器具を再利用するバイパス工事では、劣化が進んでいる器具は安全面で使用できません。そのため、器具交換かバイパス工事かを適切に判断し、コストや安全性のバランスをとって提案しています。
──その他、コストや補助金などのポイントは?
宇山:
LEDは電気代削減だけでなく、交換頻度が減ることでランニングコストも下がります。補助金の活用についても事前に調べ、ご提案しています。お客様の予算に応じて、器具交換とバイパスの両方の選択肢を用意するケースも多いです。
【施工面での工夫】
──工事を進める上での注意点はありますか?
宇山:
作業時間帯はテナント様の営業に影響が出ないよう、夜間や土日祝に調整しています。また、必ず現場に管理監督者を配置し、安全面の配慮を徹底しています。
──社内外の連携についてはいかがでしょう?
宇山:
社内では、蛍光灯の製造終了という事実だけを現場担当に伝え、詳細な説明は専門部署が担うなど、役割分担を明確にしました。協力会社とは、お客様のニーズを共有し、照度やコストなどに合った提案ができるように密に連携しています。
【印象的なエピソード】
──記憶に残っている現場や経験はありますか?
宇山:
やはりアパレルブランドの生地倉庫ですね。明るさだけでなく、光の質が求められる案件で、Ra値にこだわった提案が成功したことは印象深いです。工事中は機械や生地が乱雑にあり、作業効率が悪かったですが、工程表と安全管理を徹底し、ノークレームで終えることができました。
【LED化のメリット】
──オーナーや管理会社にとってのLED化のメリットを教えてください。
宇山:
まずは電気代やランプ交換コストの大幅な削減が挙げられます。管理会社にとってはメンテナンスの手間が減る点も大きな利点です。さらに、照明が明るくなることで空間の印象が良くなり、入居者や来訪者の満足度向上にもつながります。
──提案時に心がけていることは?
宇山:
大切なのは、現場特性を踏まえた提案をすることです。器具交換かバイパス工事かなど、複数の選択肢を示し、コスト・安全性・耐久性などの観点から最適な組み合わせを導き出します。LED化は単なる照明更新ではなく、空間の価値や運用効率を高める「提案型のソリューション」として捉えるべきだと思っています。
【今後への期待】
──2027年の蛍光灯製造禁止を受けて、今後のLED交換工事事業にはどのような期待をされていますか?宇山:
今後は、LED化が“選択肢”ではなく“必須”の工事になります。つまり、必要性ベースから必然性ベースへとニーズが変わっていくということです。私たちは、ただ照明を交換するのではなく、演色性・照度・補助金活用など多角的な視点から最適なLED化を提案できる存在でありたいと思っています。
2027年以降は部品の調達も難しくなる可能性があります。だからこそ今、計画的に取り組む「予防保全」の観点が大切です。LED工事は単なる設備更新ではなく、省エネ、安全性、資産価値向上といった“中長期的な価値”を届ける事業として、ますます重要になると期待しています。